文字通り、心を残すこと。武道では、勝負が決した後もその場を離れるまで油断をしない事。
他流の方から「伯耆流は残心が長い」とよく言われます。抜き付けから、斬撃。その後引き揚げの動作の中に「臥竜の構え」という「残心」を示す所作があります。当然演武時間は長くなってしまいます。この「臥竜の構え」が伯耆流居合の大きな特徴のひとつです。斬撃によって倒れた相手が再び攻撃を仕掛けてくるかも知れない。それに備えて、上段の構えからゆっくりと下段の構えとなり、さらに切先を倒れている相手に向けたまま刀を左脇に引いて突きの構えとなる。まさに龍が今にも獲物に飛びかからんと身構える状態。これが「臥竜の構え」です。その間顔は俯かず、目は半眼(遠山の目付け)で相手に注ぎ、呼吸静かに、油断することなく、気魄を込めてゆっくり動作する。伯耆流居合の最も大事とするところです。
武道に限らず茶道や芸能の世界など、日本の伝統文化の中に「残心」を重きとする精神は大切に受け継がれています。

 今、世の中は新型コロナウイルスの蔓延のために全国に緊急事態宣言が出され、政治も経済も、そして私たちの生活も大変な事態となってしまいました。そのような中で、皆が様々な努力を重ね、やっと宣言も解除となり、少しずつ日常生活を取り戻し始めてきました。しかし、そこに「残心」の精神が生かされていなかったことでまた感染者が増加し始めました。
今こそ先人たちが築き上げてきた、わが国伝統の精神文化を思い起こし、感染者が0になっても、決して油断することなく、長い長い「残心」を示すべきと強く思います。

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                     在りし日の相原勝雄先生の「臥竜の構え」